吉田隆『ローマ人への手紙に聴く 福音の輝き』読後感
吉田隆書、シリーズ新約聖書に聴く『ローマ人への手紙に聴く 福音の輝き』
(いのちのことば社、2021、314頁)
「シリーズ新約聖書に聴く」と称して2019年に立ち上げられた新しい企画のようです。既刊は、
遠藤勝信『真理に堅く立って:ペテロの遺言:ペテロの手紙第二に聴く』(2019)
内田和彦『地上で神の民として生きる:ペテロの手紙第一に聴く』(2019)
袴田康裕『教会の一致と聖さ:コリント人への手紙第一に聴く』(2019)
船橋誠『健全な教えとキリストの心:テトスへの手紙・ピレモンへの手紙に聴く』(2019)
袴田康裕『キリスト者の結婚と自由:コリント人への手紙第一に聴く』(2020)
赤坂泉『健全な教会の形成を求めて:テモテへの手紙第一に聴く』(2020)
袴田康裕『聖霊の賜物とイエスの復活:コリント人への手紙に聴く』(2020)
鎌野直人『神の大能の力の働き:エペソ人への手紙に聴く』(2020)
『福音の輝き』はローマ書を50の段落(?)に区切って読み解いて行く流れ。
各章は5〜8頁程度の分量ですから、さっと目を通すくらいなら5分で1項目読めます。
各項目は【 聖句の引用(新改訳2017版)→ 導入 → 解説 → 説教黙想】 という流れになっています。
文脈上一つのかたまりになっている聖句がまず新改訳聖書で引用されます。ここには章節の数字は入っていませんから、流れるように読むことができると思います。10節以上引用されるときもあれば、2、3節だけという項目もあります。本書とは直接関係ありませんが、こうやって2017年版の改訂翻訳を読むと、第3版とは随分変わったな、という印象を改めて受けます。その変化が随分あるので、ちょっと意味が捉えにくくなったかなぁ。
それから【導入】ですが、ここにはほんの数行、その段落が切り取られた意味合いが説き明かされます。手紙全体の流れの中で、どのような位置や役割を担っているのかがわかるようなコメントです。
続けて【解説】ですが、この辺りには現代人には馴染みの薄い表現や、新約時代のものの見方、価値観、使徒パウロの思想などについて本文を追いながらコメントが綴られています。
そして【説教黙想】にたどり着きます。ここがいわゆる吉田先生による「メッセージ」の部分。もともとは吉田先生が甲子園教会で連続講解説教をなさったものがベースになっているとのこと。それらの説教のポイントとなるような事柄が3〜4つにまとめられていて、読者の思い巡らしの糧となります。ここがメインディッシュです。
著者は本書は学術書でもなければ、デボーションの本でもなく、ただただパウロの「声」に耳を傾けることを主眼となさったと謙虚に言われます。確かに学術論文調の論説はありませんが、ちょっとパウロ書簡の研究をかじっている読者ならば、最新の釈義学の動向が踏まえられていることは明らかです。また、【説教黙想】の部分も3から4項目短くまとめられた文章ではありますが、一言一言が説教から汲み取られたことばですから、じっくり思い巡らしをすることのできる、洞察の深いセンテンスの数々です。小生は一気に読み終えてしまいましたが、ゆっくりと祈り心をもって読むべき一書です、本当は。
さて、つぶやきをいくつか。
(1)著者は神戸改革派神学校校長、日本キリスト改革派甲子園教会牧師、カルヴァン研究家、さらに新約の教授であられる、かの吉田隆先生ですよ。新改訳聖書の新改訂訳ももちろん結構ですが、ここは吉田先生の私訳が読みたかった!こんな機会滅多にないのにぃ。ちなみに吉田先生ご自身は新改訳聖書を普段お使いなのだろうか?
(2)教会史の中でも(特にプロテスタント運動以降)この上なく注目されてきたローマ人への手紙ですよ!
1冊だけですか??コリント人への手紙第一(袴田康裕師)には3巻あてがわれているのに、文字数でも1コリントを上回っているローマ書は1巻ですか?それはバランスとしてどうなのだろうか。
そうは言うものの、本当にローマ書が3巻本になっていたら購買能力が...かもしれませんね。
本書はローマ書を改めて味わう聖徒たちにとって、確かな手引書として末長く活躍をすることでしょう。
また、いのちのことば社のこの新企画「シリーズ新約聖書に聴く」もこれからの展開が楽しみです。
取り急ぎ、「第1ペテロ」は次に購入しないと、です。内田和彦師匠執筆ですから。
続いて遠藤勝信先生の「第2ペテロ」かな。お小遣いを貯めないと...
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