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「歴史を編む神」[創世記連講53]

聖書 創世記35:27〜36:9

創世記には「〜の歴史」という表現が9回出てきます。ここには「エドムの歴史」と記されています。創世記は節目節目を大事にする歴史記録です。そしてその節目に神さまが何をお見せになろうとしておられるのかを悟るように私たち読者に迫るのです。

1和解を実らせる歴史

神さまの歴史は和解から始まるのがその特色です。以前アブラハムが長寿を全うしたときも、イサクにイシュマエルが伴って、一緒に埋葬をした場面をお読みしました。アブラハムが生前、イサクについての神様からのお約束が間違いなく果たされるようにと、イシュマエルとの間に距離を置かせましたけれども、神さまはアブラハムの死に祭して兄弟がまた再会を果たす場面を備えられたのです。ここではエサウとヤコブが共に父を埋葬します。母の胎にいる頃から争い、若い頃は本当に生命の危険さえ危ぶまれた争いを繰り広げた仲でしたが、両親の生きている間にひとまずの和解を成り立たせることを主はお許しになり、ここで改めて二人は揃って父を埋葬するのです。

死によって、和解を成り立たたせるイメージは、私たちの福音の土台にあります。死をさえも神さまは御手にお取りになって、実を結ばせなさるのです。主イエスさまの十字架とよみがえりによる御救い。アブラハムやイサクのような長寿と平安に恵まれた死ではありませんでした。悪意と敵意の果てに、何ら罪も咎めもないままに、辱めと孤独に包まれた十字架の死が、神さまと人との間にそびえる隔ての壁を打ち壊して和解を成り立たせたのです。それがイエスさまの十字架が果たした救いのみわざです。

イサクの死によってヤコブとエサウが和解をすることは決してイサク自身の計画ではなかったでしょう。それはアブラハムにしても同じです。しかし主イエスさまの死と、その死に勝利を収められたみわざは偶発的な成り行きではなく、神さまのご計画に従ったことです。

2人を生み出す歴史

さて、36章の全体はずっとエサウの子孫がどのように増え広がっていったのかが記録されています。今までも同じように子孫の名前がそれこそ系図のように記録されている箇所がいくつかありましたが、これほど丁寧に記録されているものは他にはないでしょう。

確かにこれから創世記はヤコブとその子孫に注目しますが、それは断じてエサウがまるで何かの道具であるかのように、役割が済んだならば脇に捨てられ、神の恵みから忘れられるのではないことを証詞する「歴史」であり、「系図」なのです。

聖書の中に何度か「系図」が記録されています。最も有名な系図は恐らくマタイの福音書の冒頭に記されているイエスさまの系図でしょう。主が間違いなく人となってくださったことを裏付ける記録です。救い主は人類の歴史の中に巻き込まれてくださったのです。

神さまは人類の始まりから、折あるごとに「系図」「歴史」を刻みながら、そこに込められている神さまの御思いを私たちに伝えて来られたのです。そして私たちがまた、そのように歴史を丁寧に観察し、福音に間違いがないことを頷くように招いておられるのです。さらに言うならば、神さまは私たちの歴史を導かれ、そこに御心を刻まれ、私たちにその御心をお知らせになる。となれば私たちが自らの歴史や歩みを振り返り、神さまがなさったことを思い起こすことは有益であり、重要な信仰的営みなのです。

3祝福をもたらす歴史

エサウの系図が記録される直前に記されているのはエサウとその一族の繁栄です(6〜8節)。ヤコブが神さまのお約束通りに杖一本から二つの陣営を導くまでに豊かになりましたように、エサウもまたヤコブと共に富を加え、とうとう一つの土地で共に暮らすには大地が支えられないほどにまで祝福されたのです。そこからエサウの歴史、エドムの歴史が広がりを見せるのです。エサウもまた神さまがヤコブと同様に慈しみと恵みを注ぎなさったアブラハムの子、イサクの子どもなのです。そのことをヤコブ物語の最後に確認して私たちは次の章に進むことになります。

結びに代えて

エサウとヤコブが誕生するときに神さまから「兄が弟に仕える」とのお言葉がありました(25:23)。実は「大きい方が小さい方に仕える」というのが元々の意味だ、とお話しをしました。兄でも弟でもいいのです。大きくなった方が、小さい方に仕えるのが神さまのフェアな世界なのだということが示されているのではないか、と私たちは思いを巡らせました。強い方が弱い方に仕える、という世界はまさに主イエスさまが一貫してご自身のお弟子さんたちに教えてこられ、ご自身が示して来られた道でもありました。十字架はまさにその体現です。万軍の主はみすぼらしい罪人に仕えていのちを差し出しなさり、今もまた神の右の御座に就いて私たちのために執りなしておられるのです。私たちはその主を見上げて仕える隣人を見出すように招かれています。

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